スタジオライフ公演〜死の泉・パサジェルカTOP画像
StudioLife > 死の泉・パサジェルカホームページTOP > 死の泉・パサジェルカホームページ新旧キャスト対談
※ 多少のネタバレを含みます。

第三回 マルタ対談 及川VS関戸

関戸 今回4年ぶりの再演の「パサジェルカ」なんですが、作品全体としては、「死の泉」もそうなのですが、戦時中と戦後という構成の作品です。まずはどうしてもバックボーンとして戦争の話になりますけど、マルタはまさにその真っ只中にいたわけですが、戦争の体験というのはどういう風に自分の中に落とし込んでいったのですか?僕たちは戦争を知らないので、死と隣り合わせという感覚というのはなかなかリアリティが無いですけれど、今までそういう作品をやったことはありますか?

及川 ああやって真正面からガツンと取り組むことは、あのときが初めてだったね。稽古場でNHKのドキュメンタリーDVDをみんなで見たんだけど、あれを見たときは本当に衝撃的で、あれを体現していくのかと思うとそれはそれで考え深いものがあったね。あの時、そういうものに真正面から取り組むことになって、それでもやっぱり役者とか、人前に出て何かをする職業の人は、ああいうことはちょっとは考えておかないといけないんじゃないかなって思うようになったね。あれ以来、戦争もののNHKの特集なんかはわりと録画してたり、今でも見てるよ。表現者として、そういうことに対して何か意見が言えるというスタンスでいたいなと。月並みな言い方で言えば戦争反対みたいな思想は持っていたいなとは思うんだけどさ。それをどうこうして反対なのかという理屈みたいなものはまだ自分の中で構築されてはいないんだけどね。

関戸 戦争って役者を続けている限りは避けて通れないものですよね。

及川 そうかもしれないね。僕たちがこの生きている時代も、あの時代を経てこうなっているというバックボーンみたいなものがあるんだよね。そういうのは持っておきたい部分だよね。

関戸 そういう意味では役者の面白いのは、逆に戦争肯定派の役をやることもあるというところですよね。「死の泉」のクラウスだったり、ナチス側の人間というのも。

及川 リーザとかも、ある部分では加担しているからね。でも今でもそういうことは行われていることだから、日本だってもしかしたら間接的には何かをやっているかもしれないし。

関戸 韓国には徴兵制があって、何かがあったら戦争に行く可能性だってあるわけだし。

及川 やっぱり考えざるを得ないよね。考えなきゃいけないと思うし。浮かれているばっかりじゃだめだよね。なんか「今どきの若い者は・・・」って言ってるおじいちゃんみたいだけど(笑)

関戸 でもこのマルタという役、っていうか戦争って必ずしも加害者と被害者ではないじゃないですか?それで、パサジェルカのリーザとマルタの関係って一見加害者と被害者だけど、立場が支配する側と捕らえられている側というのがあるだけで、実はすごく戦っているというか、そこの内部の作り方ってマルタはすごく色んなやり方がある役なのかなと思うのですが。

及川 うん、そうだと思います。

及川

関戸 タデウシュ対談のときも、タデウシュはすごく自由に作っていい役だよねという話をしていて、マルタも強いは強い役なんですけど、中の弱さと強さと、台本だけではどちらかわからないというか、役者に任されている部分があるかなと。

及川 うん、解釈がね。  

関戸 そこを、及川さんはマルタのスタンスと言うか、強さと弱さとどちらを意識していたというのはありますか?

及川 あの時は、舟見がダブルキャストでマルタで、僕がやっぱりマルタで、僕と舟見が持っている色が全然違うので、ちょっと客観的に見ると多分舟見の方が柔らかくて僕の方が強いという風なことが計算できたので、あえて強くてもいいかなって、客観的に見て二つを提示するときにそういう風にしてもいいかなって考えた事はあるね。ただ、マルタっていうのはタデウシュとの関わり方でも違うし、あとリーザとの関わり方でも変わってくると思うから、芝居全体の構築が、そこはやりながらチームワークで発見していくものなんだと思うよ。

関戸 なるほど。リーザとの関係性が、マルタを作っていくうえでの重大な要素と言うか、タデウシュはもちろん、リーザとの間にどういうものが流れていたのかっていうのが、マルタの見え方だったり、そもそもの自分の筋の通し方の差だったり、ラストに向けてどういう風に気持ちが変わっていくのかというところなんですね。

及川 男のキャスティングで女心のそういうのを表現できるかっていうのを、すごくそういう意味ではリーザに期待してたっていうのを倉田さんがあとでおっしゃっていて。

関戸 リーザに?

及川 リーザに。そういう意味では、リーザとの女同士の関係みたいなものをどう考えるかという所だと思う。

関戸 では、タデウシュとの話になりますけど、芳樹さんとの恋人役というのはこの作品の前にも結構ありましたか?

関戸

及川 はいはい。そりゃあもう。

関戸 こないだ芳樹さんと話していて、この「パサジェルカ」があって、この「パサジェルカ」での及川さんとの関係があって、それが「白夜行」に繋がっているんだよということを言っていて。

及川 わかるわかる、よくわかります。

関戸 だから芳樹さんが、「及ちゃんがよかったなぁ」って僕に向かって言ってくるんですよ(笑)。この作品は舞台上ではそんなに接点があるわけじゃないじゃないですか、それでもやはり深いつながりがあるわけですよね。

及川 そうだと思う。接点が無いけど、強く愛し合っているからこそ、接点が無いことが障害となって、心の中ではすごく強い糸が結ばれるんだと思う。僕と芳樹はあんまり喋らないけど、なんとなく相手役がすごく長かったから、僕の中ではゴールデンカップルみたいな感じだったから。

関戸 いや、そうだと思いますよ。

及川 だから変な話、芳樹にこうやって手を握られて見つめられると僕泣いちゃうのね(笑)もう条件反射になっちゃってるの。自然にもう感極まっちゃうの。なんかもうパブロフの犬って感じだった。で、それがあって「白夜行」に繋がっている。

関戸 この時にそれが出来上がった感があるんですね。

及川 もう完璧に出来上がったって感じだったね。

関戸 なるほどね〜。なんか僕って元カノに相談しに来た今の彼女みたいですね(笑)

及川 (笑)。

関戸 せっかくなので、どうやったら山本芳樹を振り向かせられるのかということを。

及川 いやあ、僕にもわかんない。あの人わかんない(笑)

関戸 (笑)。不思議な先輩だから。

及川 あの人、結構謎だよね。あれだよ、謎は謎のままにしておいたほうがいいんだよ。

関戸 あ、勝手にイメージを膨らませてね。

及川 そうそう。そうやっていくのがいいんじゃない?謎は謎のままにして、案外何にも考えてないかもしれないし。

関戸 それは最近よくわかってきました(笑)

及川 (笑)。そうそう。

関戸 最近、あ、今はこの人ぼーっとしているだけだというのがわかってくるようになりました。

及川 なんか、可愛い人だなって思うよね。

関戸 そうなんですよ、芳樹さん可愛いですよね(笑)
では、関戸に激励の言葉をお願いします。

及川 なかなか、芳樹の中の、僕のマルタ像を覆すことは難しいと、勝手に自負をしているので、どう挑戦していくのかと、芳樹の愛にどう応えていくのかと。その辺が期待ですかね。先輩としては、是非覆していただきたいかな。その愛が、今回の意気込みになっていくのでしょう。

関戸 やっぱりタデウシュとの愛がどれだけ持てるかというのが全てだと思っているので、そこが無いとリーザとの関係性も成立しないと思っているので、役を精一杯楽しんで、芳樹さんを愛し愛されることを楽しもうかなと思っています。

及川 あと、リーザに対しての友愛みたいなところもね。タデウシュとの関係があってリーザがあるんだけど、実はタデウシュよりもリーザの方が深い関係になる部分もあるから、きっと海司とのチームワークで、おもしろい女同士の愛・・・わからないけど、男同士の愛は男で考えるからわかるじゃん、「お前さぁ」みたいなああいうのって、少年ジャンプ読んでるからわかるみたいなそういうのがあるけど、でも女同士のなんかそういうのもきっと発見すると、それが友愛になっていって、とっても面白い構築の仕方になっていくんじゃないかなと。

関戸 だからもし、戦争ではないところで二人が出会ったらどういう関係になったんだろうっていうのを考えるのはすごくおもしろいですよね。

及川 うん、そういうのを想像するのはね。

関戸 海司さんなりの想いもあるだろうし。「舟見とは仲良くなれるけど関戸とはなれない!」みたいなのもあるかもしれないし(笑)

及川 そういうのもあるかもしれないし、友達にはなれないなと思ったやつが、やっぱり最終的にはいちばんおもしろい関係になったりするかもしれないし。

関戸 これから苦しいでしょうけど、すごく楽しみです。こんな役はなかなかやれませんから。

及川 なかなかお目にかかれないし、きっと役者をやってる使命みたいなものが見つかるかもしれないし

関戸 お客さんにもそれを感じてもらえれば。絶対おもしろい芝居だと思うので、本当に観て欲しいですね。

及川・関戸対談

▲ top ▲

劇団Studio Life
〒165-0026東京都中野区新井1-38-10サンフジビル1F
TEL 03-3319-5645FAX 03-3319-9867
http://www.studio-life.com